旧暦歳時記

旧暦歳時記(その2)/中秋の名月

中秋の名月の夜は、大和の各地でもさまざまなお月見行事が行われる。 中秋という言葉の意味は、中の秋ということだ。旧暦では7月、8月、9月が秋の季節にあたる。7月は初秋(孟秋)、8月が中秋(仲秋)、9月は晩秋(季秋)と言われる。 秋たけなわの8月の十五夜の月が、中秋の名月として尊ばれてきた。まさに「月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」…。
今年は9月13日が、旧暦8月15日、十五夜である。たまにはゆっくりと、清らかな光のお月様とふれあいたいものだ。 ところで新しい元号・令和の典拠は、『万葉集』巻5「梅花歌三十二首并序」のなかの令月、風和。令月は旧暦の二月の麗しい月のことだが、『万葉集』には月の神様・月読命が若返りの水・「変若水」を持っているという歌がある(巻13-3245)。
満ち欠けを繰り返す月の姿に、再生の不思議な力を感じてきたいにしえの人々は、また水にも再生の霊力があると信じてきた。今も霊水と言われる湧き水が各地にあり、また元旦の若水汲みの民俗も知られている。東大寺二月堂の修二会で行われる「お水取り」も、春迎えの若水汲みの伝統に基づくものと考えられる。民俗学者の折口信夫は「若水の話」で、古い信仰を伝える沖縄の例をあげながら復活・再生の水について考察している。
月と水の復活・再生の霊力。この二つの信仰が結びついたのが、「月読命が持てる変若水」だと思われる。